日常的に仲がいいせいで誰も疑問に思わないふたりww
「ゴーイング」(金天)
音楽室という開かれた空間で、堂々と職務怠慢を満喫する音楽教師が一人。
そしてその隣で思いきり校則違反を敢行する生徒が一人。
「ほら見てみろ、俺のアルバムコレクション、すごいだろ~。」
「うわっ、なにその全コンプな上にベストショット写真まで取り揃えてるマニアック感。」
携帯電話を並べながら、画面に写し出される種々様々の猫祭り。
教師の完全攻略ぶりに比べ、女子生徒の「にわさき」にはふてぶてしい白猫が満腹そうにお腹お膨らませて横たわる姿。
「あっ、またやられてる!」
それを見て笑う独身教師の、なんたる勝ち誇った表情か。
「高級な食事を外に置いとくからだな、それは。」
あたかも専門家よろしく分析し、面白そうに彼女のアトリエを覗き込み余裕の笑み。
大人げないとはまさにこのことである。
「わかってはいるんだけど、ついついこの満足顔に会いたいっていう気持ちもないことはないんだよねー、私。」
そんな、小バカにされた女子生徒ではあったが、今回ばかりは素直な返答でちょっとしたフェティシズムをちらりと覗かせ、そのアクシデントを楽しむ表情を見せる。
それに同意しながらも教師は、まだまだ詰めが甘いなと完全勝利の余韻に酔いしれていた。
「っていうか、金やん。きっと帰ったら家でそんなことばっかりやってるんだろうね。そんなにすることないなら私が構ってあげようか?アプリの猫ちゃんよりは話し相手になれるよ?」
ちょっと悔しかったので嫌味攻撃に転じてみる。
すると図星を刺されたのか一瞬怯んだ教師ではあったが、持ち前のはぐらかしセンスでーーそれは単なる負け惜しみともいうーーひらりとそれをかわした。
「俺はな、お前さんたちと違って学校でやることが山ほどあるんだよ。だから家に帰った時くらいどっぷり癒しにはまりたいんだよ。」
「え、じゃあ私が癒してあげるよ。ほら、遠慮しないで連絡先教えなって。なんだったら直接家に行ってあげるのでもいいよ!」
ああ言えばこう言う。
全くいつもこの生徒ときたら遠慮がなくお節介だ。
「いや、なんでそうなるんだよ。お生憎さま間に合ってるって。」
「いやいや、そう遠慮せずにー」
とかなんとかいう攻防が昼休みの音楽室名物になっているとかいないとか。
「天羽ちゃんってさ、ほんとわかりやすいよね。」
それを微笑ましい眼差しで眺めている音楽科3年の火原和樹と柚木梓馬。
「そうだね。金澤先生も案外楽しそうにしてるしね。」
そもそも彼女が先のアプリを始めたのだって彼が原因だとかそうでないとか。
真相は謎のままだったけれど、今日もこうして星奏学院の平和は守られているのだった。
End
案外名物コンビ。
絶対あのアプリやってそうだなという妄想から。
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2015/09/27
SS(金天)